共生社会のマナビ 障害者の生涯学習推進ポータルサイト

広がるマナビ ~障害者の多様な学び場・活動紹介~

学校から社会への移行期における障害者の多様なマナビ 大学による実践の紹介

相模女子大学が取り組むインクルーシブな生涯学習プログラム

障害者の大学での学び

 特別支援学校を卒業した障害者の多くは、就職や福祉事業所の利用者という形で社会に出ていきますが、その中には、大学に通いたかったが、行くことができなかったという思いを持つ方が少なからずおられます。

 大学は、学問や研究の場であるとともに、同年代の若者とともに、ゼミやサークル活動などを通じて自分磨きをする「モラトリアム」の場でもあります。また、充実した施設・設備、専門性に富んだ教員など、様々な教育的資源があり、その資源を活用した地域貢献が大学のミッションとして求められています。地域の教育機関として重要な役割を担っている大学は、本来すべての地域住民に開かれているべきですが、現実には、大学で障害者が学ぶことには多くのハードルがあり、十分な活用がなされていない状況があると言えます。

 そこで、障害者が学ぶ場としての大学の活用を推進するため、文部科学省は、障害者の学びの場づくりに先進的に取り組む大学と連携し、その実践と成果を社会に広げる取組を進めています。これまでに取り組まれた様々な大学による実践からは、「学びが日々の活力になっている」という障害者の声が多く聞かれるだけでなく、実践に参加した大学生には障害や多様性などの考え方に大きな変容がもたらされる、という報告がなされています。

(令和7年度文部科学省委託事業 大学におけるオープンカレッジ等の事例)

 今回は、学校卒業後の障害者の学びの場の取組を進めている、相模女子大学の「インクルーシブ生涯学習プログラム」についてお伝えします。

相模女子大学 「インクルーシブ生涯学習プログラム」

 神奈川県相模原市にキャンパスを置く相模女子大学人間社会学部教授の日戸由刈氏は、特別支援学校の元教員である川口信雄氏の「特別支援学校を卒業した障害のある若者にも、大学で同世代の若者と一緒に学んだり語ったりできる場があってほしい。」という思いを受け、2019年、日戸ゼミの学生と福祉施設を利用中の障害のある若者との交流活動を開始し、大学主催の講座「さがみアカデミー」において、障害者と大学生が共に学ぶことができる活動に着手しました。

 2021年度からは、これまでの活動をもとに、大学が所在する相模原市との協働による、文部科学省の委託事業を活用したプログラム開発事業を開始しました。これによって開発されてきたのが、発達障害や知的障害の若者と相模女子大学の学生がともに学ぶ「インクルーシブ生涯学習プログラム」(以降、同プログラム)です。

オープン・セミナー「大学で学ぶ楽しみ発見セミナー」

 同プログラムの中核をなすものは、「大学で学ぶ楽しみ発見セミナー」(以降、セミナー)です。セミナーは土曜日に開催され、障害の有無や性別に関わらず、中学生から30代までの若者なら誰でも参加できることから、毎回総勢20~30名ほどの若者が大学でともに学びを深めています。2025年度は、講師や内容が毎回異なるオムニバス形式で、計4回のセミナーが開講されました。参加者は、学生と発達障害や知的障害の若者がほぼ半々の割合でした。

(2025年度のセミナーのチラシ)

<「大学で学ぶ楽しみ発見セミナー」の構成>

第1部 大学教員による講義

 講義のテーマや内容は、発達障害や知的障害の若者と学生の意見を尊重して決められています。教員は、平易な内容ばかり取り上げるのではなく、専門的・発展的な内容も、参加者に理解しやすいよう教え方を工夫(図表やイラストを多用したり、ゆっくり説明したりするなど)し、発達障害や知的障害の若者と学生の双方にとって、満足度の高い時間となるよう心掛けています。発達障害や知的障害の若者たちは、同世代の学生たちと一緒に考えたり学んだりする時間を、とても楽しく、有意義に過ごしています。

 2025年度も様々なテーマの講義が行われましたが、食堂車や駅弁をテーマとした講義では、自身の趣味につながる発達障害や知的障害の若者も多く、真剣なまなざしで学びを深めていました。

(講義の様子(左)と講義中のグループワークの様子(右))

第2部 就労ワンポイント講座

 特別支援学校の元教員の川口信雄氏が、障害当事者の視点を踏まえて、働き続けるために必要なライフスキルについて話す講座です。講義終了後、川口氏がすでに社会人として勤務している知的・発達障害者(本事業では「勤労青年」と呼んでいる)と対談形式で講座を進める場面もあり、勤労青年の本音を聴くことができる貴重な機会となっています。「趣味などで余暇の時間が充実していたため、仕事でつらいことがあったときも頑張れました。」という勤労青年の言葉があるなど、大学卒業後に社会へ出ていく学生にとっても、新たな気づきが多い内容になっています。

(川口氏(右側)が勤労青年(左側)と対談している様子)

第3部 私の趣味自慢タイム

 勤労青年と学生が同じテーブルにつき、自分の趣味について語り合う時間です。セミナーの中で一番の楽しみだと語る発達障害や知的障害の若者がとても多く、職場等では普段話す機会がない趣味について、参加者たちと熱心に語り合います。参加者はみな、趣味を紹介するために様々なグッズを持参しており、写真や、段ボールで作った模型、愛用の楽器を持参した人もいました。

(「私の趣味自慢タイム」の様子)

 このようなセミナーを経て、大学で学ぶ楽しみを発見した参加者が、さらなる学びを進めるための仕組みとして、「ゼミ活動」という場を設けています。相模女子大学講師の宮野雄太氏がリーダーをつとめる、大学図書館のセミナールームにて少人数で繰り返し交流を行うゼミ活動は、誰もが参加できるセミナーとは異なり、固定メンバーだけのクローズな活動です。メンバーは大学の雰囲気を楽しみながら、顔なじみの面々だけで安心して思いを語り合うことができています。セミナーでは語り切れない話を、より関係性が深まった若者同士で語り合います。

勤労青年と学生たちが主体となった運営「エンパワメント・プログラム」

 同プログラムの実施において、勤労青年や学生たちの力は大きな推進力となっています。同プログラムを支える仕組みである「エンパワメント・プログラム」は、ゼミ活動を修了した勤労青年と学生が、支える・支えられるといった関係ではなく、共にプログラムを運営する主体としての対等な関係で、3つの活動に取り組んでいます。

① セミナー運営

 セミナー全体を通して、司会や会場の転換などの運営活動を、役割分担しながら行っています。セミナーの第3部「私の趣味自慢タイム」では、複数のグループに分かれた意見交換の際に、それぞれのグループの進行役として活躍しており、参加者へ上手く質問を振っている様子もありました。また、セミナー後には「前回うまくいかなかった部分が、今回はとてもスムーズにできていたね!」など、反省しつつお互いをたたえ合う場面も見られました。

② リサーチ活動

 セミナーの参加者へのアンケートや勤労青年から寄せられた意見を踏まえて、セミナーの意義や効果などを検討する活動です。次年度のセミナーで取り上げる講義テーマの企画の作成も行っており、勤労青年・学生それぞれの視点から意見を交わしながら、より良いプログラムを目指しています。

③ メディア活動

 同プログラムを各地域に普及啓発することを目的としたメディア活動で、セミナーの取材や、広報動画等の制作・編集を行っています。活動メンバーの自己表現力の向上につながっているほか、製作された動画を、相模女子大学のホームページやYouTubeで公開することで、同プログラムの魅力を発信しています。

 同プログラム開発の初期の段階から参加し、現在は運営に関わっている勤労青年たちからは、「このプログラムに参加することが、自分の心身の健康につながっています。以前仕事がつらくて休職していたときも、この活動に参加していたことが日々の活力になっていました。」「運営チームとして活動をしていることが、自信につながっています。これからも活動に関わっていきたいです!」といった声が聞かれ、同プログラムに対する強い思いを感じることができました。

 また、勤労青年とともに活動している学生も、同プログラムへの参加について、「プログラムに参加し、勤労青年のみなさんと一緒に活動することで、それまで感じていた、障害のある方との『壁』のようなものがなくなりました。」と述べており、障害の有無に関わらず、ともに学ぶ場の価値が感じられるプログラムとなっています。

(勤労青年や学生が運営の打合せをしている様子)
まとめ

 今回は、発達障害や知的障害のある若者を主な対象とした、相模女子大学のインクルーシブな生涯学習の取組について紹介しました。同プログラムのコーディネーターを務める、相模女子大学人間社会学部准教授の武部正明氏は、同プログラムの意義を次のように述べています。

「豊かな人生を生きていくためには、人生のうち一番長い期間でもある成人期の充実が大切ですが、成人期の充実には、就労を頑張ることはもちろん、余暇が充実していることもとても重要です。ただ、障害のある若者たちにとって、休日に仲間と余暇を過ごす場や機会はまだまだ少ないのが現状でもあります。『インクルーシブ生涯学習プログラム』では、同年代の若者とともに学び、対等な立場で語ることで、社会生活を送るための活力を得て、QOL(生活の質)の向上につなげていくことができます。」

 発達障害・知的障害の若者たちのウェルビーイングの向上に貢献しているという点は、大学による地域貢献活動として、地域住民からも高く評価されています。

 このような価値ある取組を全国にも広めていくために、メディアの活動などを通じて、同プログラムは、全国各地の大学への波及を目指しています。本活動の統括責任者である相模女子大学副学長の中村真理氏は、今後の展望を次のように述べています。

「相模女子大学としては、今後も同プログラムの実施・開発は継続していきたいと考えています。一緒に活動している勤労青年や学生たちも、この取組をより良くしようと真剣に考えてくれています。大学で学びたいという思いのある障害のある方は多くいるので、このような取組を行う大学が、全国各地でもっと増えて欲しいと願っています。」

 今後とも、障害のある方の「大学で学んでみたい!」という思いに応えられるよう、文部科学省では、大学における、個性豊かな学びの場づくりを推進してまいります。

団体リンク

相模女子大学 インクルーシブ生涯学習プログラム(相模女子大学HP)(外部リンク)

相模女子大学 インクルーシブ生涯学習プログラム(公式LINE)(QRコード)

・本プログラムの情報を公式LINEでも配信しています。ご関心のある方は、以下から登録ください。

その他

相模女子大学 取組紹介(令和6年度「学校卒業後における障害者の学びの支援推進事業」)

超福祉の学校@SHIBUYA 2025 シンポジウム 就労×余暇~仕事も遊びも、そして学びも全部大切!~(外部リンク)

 ↑「インクルーシブ生涯学習プログラム」のメンバーが登壇したシンポジウム

お問合せ先

総合教育政策局 男女共同参画共生社会学習・安全課 障害者学習支援推進室
Adobe Acrobat Readerダウンロードはこちら
PDF形式のファイルを御覧いただく場合には、Adobe Acrobat Readerが必要な場合があります。
Adobe Acrobat Readerは開発元のWebページにて、無償でダウンロード可能です。
PAGE TOP